
この評論の主旨は、「老いたクリエイターのほうが、若い世代よりも効率よく良い発想ができる」というところから来ていますが、そもそも論として、年齢によって発想の有利不利は発生するのでしょうか。
【執筆者】ライター/40代後半男性/神奈川 この人の次の記事→
そもそも年齢が発想に関連しているのか
まず「若い」ということのメリットとして、
- ・勢いがある
- ・損得勘定が年長者より少ないことが多い
- ・見た目が綺麗なことが多い
ということがあげられます。
またデメリットとしては、
- ・経験が少ない
- ・見聞が少ない
- ・ボキャブラリーが少ない
といったことがいえます。
ベテランについてはその逆、ということがあるのですが、こと「発想」というところについては、昔からいわれているところの
「頭の回転が早い」
「切り返しの仕方が妥当=場の要求にそぐわないことが少ない」
等が特徴としてあげられます。
こういった特徴は、年齢以前に「その人の素養」に依存する部分が大きいのではないでしょうか。
なぜならば、いわゆる「面白い人」は、若い時から面白く、年齢を重ねたとしてもその評価はそれほど変わらないものだからです。
逆に、「面白くない人」は、どこまでいっても面白くないことが少なくありません。
お笑い評論の信ぴょう性
そもそも「面白いか、面白くないか」というものは、もともと非常に個人的なものであり、
「非常に人気がある=多くの人が面白いと評価している」
ということとは、別の次元の判断です。
個人的に「面白い」という評価を下すためのバックボーンとして、その人個人の価値観や家庭環境、周囲の人達との関わり等、非常にパーソナルなものです。
それに対して、
「非常に人気がある=多くの人が面白いと評価している」
という事実は、それを評価している多くの人たちは、面白いかどうかではなく、
「周囲の人達と同調するかどうか」
という判断をおこなって、結果的に
「みんなが良いというなら、自分も受け入れる」
といった評価を下していることが多いものです。
このような事実から考えてみると、そもそも「面白いかどうか」という評価は、
「その時代時代で多数決で決まるものであり、絶対的な評価ではない」
ということがいえるのではないでしょうか。
絶対的なものではないとすると、お笑いにおける一部の人の評論=意見というものの信ぴょう性自体があやしいものである、といえそうです。
年齢によるメリット・デメリットとは
一方、生物学的には、年齢による差異というものは確実に存在していて、年を取ると
「対応力の低下(=お笑いの世界では「瞬発力が弱る」という言われ方をします)」
であるとか、
「忘れっぽくなる(=台本や段取り通りにネタを進めることが困難になる)」
「周囲を気にせず、独善的になる(=「芸を極めた」という評価がなされる場合もありますが、「終わった」という言われ方をする場合もあります)」
といった特徴が出てきます。
これらは必ずしも良い要素だけではありませんが、かといって全くダメな要素ばかりとも言い切れません。
やはり、先ほど述べたように、「その時代の空気」によって、その評価は大きく影響されるのです。
若い発想は、本当に老いたクリエイターより劣っているか
「お笑いの発想力において優れているのは、若いかベテランか」
といった設問の結論としては、
「発想力が絶対的なものではない以上、それを評価する時代に生きている大衆=消費者の動向に左右されるものである」
ということになります。
「何点以上は秀才である」とか、「○○大学以上を出ていれば、エリートである」といったような、偏差値的な評価を「お笑いの発想力」に当てはめること自体がナンセンスであり、お笑い界の中で事実として評価できることとしては、「○○賞を取ったから重鎮」といった客観的なものだけである、というのが当欄の結論になります。
【執筆者】ライター/40代後半男性/神奈川 この人の次の記事→